耐震補強工事の補助金制度
毎年行われている町の耐震精密診断ですが、今日は担当したお宅へ耐震診断結果報告書の説明に行って来ました。
耐震診断の結果や地震に対して弱い部分とその原因について説明をしていきます。
評点が1.0未満の場合は倒壊の可能性がありますので、同時に補強方法の提案もさせていただいています。
耐震に係わる建物の構造については以前書いた記事を参照下さい。
http://kobaado.blog26.fc2.com/blog-entry-285.html
町の耐震診断を受けた方は、最大で60万円の補助金が出る制度があります。
耐震補強工事をご検討の方はこの補助金制度をご利用下さい。
・補強工事を行うための助成制度について
診断士による診断結果(総合評価)が1.0未満のもので、工事の種類が住宅の耐震改修工事(補助対象工事費限度額120万円)
補助額は1/2かつ60万円以内(補助額の1/2は県が負担)
補助を受けられる条件は、給与収入のみの方で、収入金額が1,442万円以下の方。
その他の方は、所得金額が1,200万円以下の方が対象です。
お住まいの市町村によっては補強工事の補助制度がご利用いただけない場合もあります。
詳しくはお住まいの市町村の補助金担当窓口または、最寄の地方事務所(商工観光)建築課にお問い合わせ下さい。
住宅エコポイント1年延長
政府からの発表により、住宅エコポイント制度が1年延長(23年12月末まで)になりました。
これは「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」によるものです。
住宅エコポイント制度については以前書いた記事をご覧下さい。
http://kobaado.blog26.fc2.com/blog-entry-403.html
期間延長に加え、ポイント対象も拡充されました。
追加項目としては、高効率給湯器(エコキュートなど)、太陽熱利用システム、節水型のトイレなど、省エネ性能に優れた住宅設備が追加されました。
今までの動向を見ていると、家電のエコポイントに比べ盛り上がりがいまいちな住宅版エコポイントです。
延長+ポイント対象追加により、少しでも住宅の着工件数増加につながってもらいたいと願っています。
経済産業省、環境省、国土交通省による申請受付サイトはこちら
http://jutaku.eco-points.jp/
増築・改修の確認申請について
~増築工事・改修工事を行う時に確認申請が必要な条件について~
増築工事は何となくわかるけど、改修工事がピンとこない・・・
という方のために、まずは改修工事についてのお話からする事にしましょう。
改修工事とは、床面積が増加しないリフォーム(内外装の改装)のことです。
そして、この改修の時に床面積が増加した場合「増築工事」へと言い方が変わるのです。
増築工事・改修工事を行う時、確認申請が必要ない場合があります。
ここで建築基準法により確認申請が必要となる条件を解りやすくご紹介します。
~増築工事で確認申請が必要となる条件~
1、増築部分の床面積が10㎡を超える場合
2、敷地が防火・準防火地域の場合
※新築については10㎡以内でも確認が必要になります
6畳が9.93㎡で約10㎡なので、6畳以上増築となる場合が対象と覚えるとわかりやすいです。
防火・準防火地域とは、都市計画区域内に定められる地域で、大火災を防ぐために火災の発生率の高い木造等の建築を制限するものです。
~改修工事で確認申請が必要となる条件~
1、改修部分が対象部分の過半である場合(大規模な模様替え、大規模な修繕)
2、改修対象が建築物の主要構造部の場合
※ただし建物の用途や面積、構造などの条件によっては確認が不要の場合がありますので建築基準法6条1項を参照下さい
建築基準法6条1項の4号に該当すれば大規模な模様替え、大規模な修繕は対象外で確認不要
「模様替え」とは、異なる材料で造り替えることで、「修繕」とは、同種の材料で造り替えることです。
解りやすく言うと、屋根を半分以上「瓦」から「鉄板」へ葺き替えると「大規模な模様替え」となり、屋根の半分以上を「瓦」から「瓦」へ葺き替えると「大規模な修繕」という事になります。
主要構造部とは、壁・柱・床・梁・屋根・階段を示します。
増築工事・改修工事の場合はこれらを確認してから書類を製作しましょう。
住宅エコポイント
今日から「住宅エコポイント制度」の申請受付が始まりました。
この制度は簡単に言うと、家電エコポイントの住宅版です。
最大30万円分(1ポイント1円で最大30万ポイントまで)の商品購入などができます。
工事対象は、新築とリフォームがあります。
エコ住宅の新築
・省エネ法のトップランナー基準(省エネ基準+α(高効率給湯器等))相当の住宅
・木造住宅(省エネ基準を満たすものに限る)
エコリフォーム
・窓の断熱改修 内窓設置(二重サッシにする)、ガラス交換(複層ガラスにする)
・外壁、天井又は床の断熱材の施工
※併行してバリアフリーリフォームを行う場合、ポイントが加算されます。
エコポイントの発行対象期間
・新築の場合、平成21年12月8日~平成22年12月31日に建築着工したもので、平成22年1月28日以降に工事が完了したものが対象
・リフォームの場合、平成22年1月1日~平成22年12月31日に着手したもので、平成22年1月28日以降に工事が完了したものが対象
これで少しは住宅の着工件数が上がってくれることを期待したいです。
住宅エコポイント制度の詳細は下記のサイトをご覧下さい。
申請書もダウンロードできます。
http://jutaku.eco-points.jp/
N値計算法
地震などの水平荷重が作用するときに、耐力壁の両端の柱の柱頭、柱脚に大きな引き抜き力が発生します。
構造計画の基礎については昨日の記事を参考にして下さい。
このような引き抜きを防ぐために金物で補強するのですが、以下の2つの方法のいずれかによって選択します。
(1) 告示(平12建告第1460号)による規定の仕様にて金物を選択する。
(2) N値計算法で計算し、その数値により金物を選択する。
(1)の場合は告示の表を見て金物を選択するだけなので、計算の必要はありません。
(2)は設計した住宅に見合う接合方法を選択できます。
今このN値計算法を勉強中です。
軸組図を書かないとできないので、結構大変な作業になります。
計算式があり、これに数値を当てはめてN値を出します。
・平屋建ての柱、もしくは2階建ての2階部分の柱、および2階建ての1階で上に2階がない部分の柱
N=A①×B①-L
N : N値(引き抜き力)この数値により金物を選択
A① : 検討する柱の両側の壁倍率の差(筋かいの場合は補正値を含む)
B① : 周辺部材の押さえ効果を表す係数0.5(出隅の場合0.8)
L : 鉛直荷重による押さえ効果を表す係数0.6(出隅の場合0.4)
・2階建ての1階で上に2階がある部分の柱
N=A①×B①+A②×B②-L
N、A①、B①は上記の平屋建て等の柱の場合と同じ
A② : 検討する柱に連続する上階(2階)柱の両側の壁倍率の差(筋かいの場合は補正値を含む)
B② : 2階の周辺部材の押さえ効果を表す係数0.5(2階が出隅の場合0.8)
L : 鉛直荷重による押さえ効果を表す係数1.6(出隅の場合1.0)
平屋建ての部分、2階建ての2階部分、2階建てで上に2階がある1階部分で計算式が変わります。
これは2階建ての1階部分の柱の引き抜き力は2階の壁も関係してくるためです。
参考書を見ているだけではよく解らないので、実際に仮の図を書いて計算してみました。
2階建ての建物で、木ずり片面打ち(壁倍率0.5)の壁を主体にし、筋かい(壁倍率2.0)を入れた耐力壁でもたせる構造です。
外部に面する筋かいが入った場所の両柱①②③④を検討しました。
まず最初に壁倍率の差Aを算出します。
※耐力壁の壁倍率については建築基準法「令第46条、昭56建告第1100号」を参照
柱①と③は外部に面しているのでそのままの壁倍率の数値2.0を使います。
柱②と④は2.0と0.5の壁に囲まれているので、2.0と0.5の差を求めると1.5になります。
筋かいが柱の上部か下部かどちらに取り付くかによって柱の引き抜き力が違うので、補正値が適用されます。
参考書に載っている表の数値を入れました。
柱①と④は-0.5、柱②と③は0.5です。
出た数値を計算式に当てはめてみます。
① (2.0-0.5)×0.8+(2.0+0.5)×0.8-1.0=2.2
② (1.5+0.5)×0.5+(1.5-0.5)×0.5-1.6=-0.1
③ (2.0+0.5)×0.8-0.4=1.6
④ (1.5-0.5)×0.5-0.6=-0.1
計算で出た数値により、建築基準法「平12建告第1460号表3」から金物を選択します。
①の柱はN値が2.2なので必要耐力15.0kNの(と)に該当する金物になりました。
③の柱はN値が1.6なので必要耐力8.5kNの(ほ)に該当する金物になりました。
②と④の柱はN値が-0.1で0.0以下なので、必要耐力0.0kNの(い)に該当する金物になります。
一見難しく見えるN値計算法ですが、図を書いて数値を入れることによって解りやすくなります。
実際にやってみるとそれほど難しくはないですが、それぞれの軸組図を書いて検討しなくてはならないので、実際の設計図を計算する場合は手間と時間がかかりそうです。
構造計画の基礎
木造住宅は地震力や風圧力などの水平力に対して耐力壁で抵抗します。
耐力壁は大まかに上の2種類に分類されます。
左が斜めに部材を入れる「筋かい」です。
右が全体的に面材を打ち付ける「構造用合板」です。
※建築基準法「令第46条」参照
耐力壁を検討する場合、柱と柱の間隔が狭い場合には注意が必要です。
柱間隔が90cm未満になってしまうヶ所に筋かいなどを入れても、耐力壁とみなせないのです。
耐力壁を設ける場合は90cm以上を確保しましょう。
壁量計算をする場合、地震力と風圧力の両方を検討しなければなりません。
地震力は両方向にゆれるので必要壁量が同じですが、風圧力はX軸方向、Y軸方向の風を受ける面で必要壁量が変わってくるためです。
地震力は階ごとの平面図から床面積に乗ずる値を掛けて必要壁量を求めます。
風圧力は階ごと、方向ごとに立面図から見付面積に乗ずる値を掛けて必要壁量を求めます。
それぞれ求めた地震力と風圧力の値を比べて、どちらか大きい値が必要壁量となります。
※建築基準法「令第46条4項」参照
風圧力に関しては勘違いしやすいので、解りやすいように図を書きました。
風圧力の見付面積は床面より1.35m上の部分の面積になります。
左側からの風圧力を支えるのはY面見付面積のY軸方向の耐力壁ではありません。
Y面が受ける風圧力を支えるのはX軸方向の耐力壁です。
X面の風圧力はY軸方向の耐力壁が支えるという事になります。
勘違いして逆に計算してしまうと数値がだいぶ変わってしまうので注意しましょう。
耐力壁は量だけでなく、配置も重要です。
配置が偏っていると力が加わったときに建物がねじれて耐震性が損なわれます。
南面の日当たりを考えて開口部を大きくとり、南面に壁がない住宅を見かけますが、このような建物は耐震上よくないです。
地震力や風圧力が加わると、建物全体がねじれて耐力壁の少ない部分が大きく変形してしまいます。
これを防ぐために、耐力壁の配置をバランスよく入れることが重要です。
耐震補強をする場合についてもバランスよく補強耐力壁を配置することで地震に強い家になります。
この壁配置のバランスを確認する方法として「四分割法」があります。
※建築基準法「令第46条第4項、平12建告第1352号」参照
X方向の壁のバランスを検討
まず建物の平面を1/4ごとに区切ります。
1/4の範囲の斜線部分に入るX方向の耐力壁のバランスを見ます。
斜線部分の床面積を求め、その床面積に対して必要壁量が足りているか確認します。
北面は水周りなどで壁が多く、逆に南面は開口部を大きくとり壁量が少なくなりがちですので、筋かいの量などで調整してバランスをとります。
同じくY方向の壁のバランスを検討をします。
これは1階、2階それぞれ建物全体の長さの1/4で区切り検討します。
耐力壁を活かすためには、水平構面の剛性や耐力を確保する必要があります。
床面や小屋ばり面に「火打」と呼ばれる部材を設置します。
※建築基準法「令第46条第3項」参照
図は床面を平面的に上からみた図です。
このように斜め45度に入る部材を示します。
地震力や風圧力の水平力が働くと、部分的に建物が変形してしまいます。
これを防ぐと共に、力をバランスよく耐力壁に伝える役目をするのが火打材です。
土台、2階床、小屋にそれぞれ設置します。
設置ヶ所は、建物外周の出隅部分、入り隅部分、土台や梁の交差部分などにバランスよく配置します。
これらを参考に、今住まれている間取りを確認してみて下さい。
北面には壁がたくさんあるのに、南面は全面開口部で壁がない!なんて場所はありませんか?
このような建物は地震が来たときに心配です。
心配な方は耐震精密診断を受けて下さい。
現在町でも耐震精密診断の募集をしていますので、利用してみてはいかがでしょうか。
当事務所でも耐震診断依頼受け付けますので、ご相談下さい。
夢創り工房「小林建築設計事務所」