やまテラス 見学会
長野県が整備した「やまテラス王滝」は、御嶽山大滝口7合目にあたる『火山と自然の情報館』です。
赤色の変形した切妻屋根が水平に伸び、噴石から建物を守る外壁の蛇篭が目を引きます。
手前の1段高い駐車場から建物を通り抜ける大階段を下りて、御嶽山に向かうことになります。
階段を降りると右側に情報館へと導かれます。半野外的大階段の広場は休憩所にもなりうる気持ちよい空間となっています。
この施設は「御嶽山の成り立ち」「御嶽山の自然」「火山を知る」「山と人との関わり」の4つの展示をジグザクに常設しています。
RC部分は噴火時の避難所ともなります。
屋根架構は「さとテラス」と同様に棟が斜めに通り、同じ形の繰り返しに見えるが取り合いが全て違い、複雑に組まれています。
蛇篭壁上部はガラス窓となっていて開放感があります。蛇篭の壁は噴火の軌道を計算して造られています。
RC+S+W造平屋建て混構造の建物となっています。
さとテラス 見学会
長野県建築士事務所協会・建築士会大北支部合同研修会で木曽の御嶽山ビジターセンター2施設を見学しました。
2つの施設はセットでの一般公望プロポーザルで、yHa architectsが当選し設計された建物です。
こちらは木曾町が整備した「さとテラス三岳」です。
道の駅三岳の隣で大滝川沿いに建つ木造平屋建てで、一方向へとせり上がる屋根の形状に特徴があります。
赤い屋根と外壁の黒いガルバリウム鋼板・腰壁保護の蛇篭が程よく景観に調和しています。
木曾の成り立ち・御嶽山の自然の魅力・2014年に起きた噴火の概要など3つの展示を常設しています。
屋根架構は地元のカラマツとヒノキが使われ、複雑に組まれた構造もリズミカルに見え、心地よい内部空間を作り上げています。
エントランスは大滝川まで檀上に伸びて、川沿い周辺の景色を楽しめます。
左に入ると展示室へ、右には休憩室が用意されています。
展示室への導入部分は大滝川に開放された窓がとられ、気持ちを新たにさせてくれます。
休憩室はシンプルな空間構成となっていて、気持ちを落ち着かせてくれます。
建物探訪 「富岡倉庫」
明治33年に設立された富岡倉庫(株)が建設した倉庫群で、繭などの蚕糸や玄米・石炭などの物資を扱っていた。
レンガ積「1号倉庫」と木造土壁「3号倉庫」は創業当時に、大谷石積み「2号倉庫」は大正12年に建てられている。
右側の乾燥場の年度は不明。
平成28年富岡倉庫(株)が廃業となり、市に寄贈され賑わいを創出する市民の交流拠点として活用される。
3号倉庫は改修設計も隈研吾建築都市設計事務所が行っている建物で「おかって市場」の店舗として活用されている。
耐震改修は無垢の鉄骨柱と頭上に走る炭素繊維のワイヤーで補強されているが違和感がなく意匠的に納まっている。
風格のある大谷石積み2号倉庫は改修工事が昨年度終了し、1階が飲食・物販、2階をイベント・ワークショップとして活用している。
1階の軽食・喫茶コーナーから2階へと軽やかな階段で動線が繫がっている。
耐震改修方法は3号倉庫と同じ手法をとっている。
1階部分の壁は大谷石積みの壁がそのまま表しとなっているが、2階は繭の貯蔵の為、保護として亜鉛鉄板張となっているのをそのまま残している。
2号倉庫から1号倉庫にかけてのパーゴラは(耐震補強も兼ねているのか?)2つをつなぐ通路の役割をしているが、現在屋根はかかっていない。
1号倉庫は世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」のガイダンス施設 群馬県立世界遺産センター(セカイト)となっていて、富岡製糸場と絹産業遺産群について解説のパネル・シアターなどで情報を発信している。
1号倉庫の耐震改修も同じ方法がとられているが、建物のボリュームから柱が若干太めとなっている。
建物探訪 「富岡市役所」
上州富岡駅から富岡製糸場に向かう経路上に位置し、行政棟と議会棟を L字に配置し、その間を通り抜けるストリート型の建築となっている。
目の前には大きな芝張りの広場とその脇に斬新なあずまやが設けられ、市民の憩いの場でもありイベント等にも有効活用されている。
二重の勾配屋根は通風・遮光の高窓がとられ、大きく張り出した庇や外装に用いたアルミと木のハイブリットしたルーバーが特徴となっている。
議会棟と行政棟の間に取られた中庭から、富岡製糸場へと通り抜けの動線が延びて行く。
議会棟内部エントランスホールの壁はきびそ(蚕が最初に吐き出す太く硬い糸)をクロスにして造られている。他の随所にもこの壁は使われている。
3階まで吹き抜かれ、心地よい空間構成となっている。
H24年に公開プロポーザルにより、(株)隈研吾建築都市設計事務所が設計を受注し、H30年に完成した。